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低空飛行でダラダラと。ゆるーくやってます。
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「コレやるよ。猿飛」

そんな言葉と共に眼前へと差し出された小振りな箱に佐助は思いっ切り固まった。


「何……コレ……」
「チョコレートに決まってンだろ?」
何寝惚けた事吐かしてやがる。

一僂の望みにかけて呟いた台詞を間髪入れずに切り捨てられて、佐助はより一層固まった。
例えば此所は学校の廊下だとか、更に言うなら職員室の前だとか、授業はとっくに始まっているのだとか、そんな事実は取るに足らぬ些抹事に過ぎないだろう。何処からどう見ても教育に携わる者だとは思えない数学教師にとっては。
だがどんなに傍若無人で厚顔不遜なセクハラ一歩手前教師だとしても教師は教師。呼び止められれば止まらざるを得ない。セクハラも「一歩手前」の匙加減と周到な計画性でもって、失職に追い込む事は出来そうにもないのが現状だ。
当の数学教師は薄く笑いを浮かべたまま、手にした箱を固まったままの佐助に手渡す。

「どうせテメェは用意してねぇだろう?」
「……」

図星を突かれて佐助は黙る。
実は年下の従兄弟と金髪の幼馴染み用にチョコケーキを焼いていた時、もう一つ作るべきなのかと一瞬迷った。迷って躊躇って、そう思い悩む自分が嫌で、結局去年と同じ数しか作らなかった。
真坂こうして堂々と要求してくるとは思いもよらなかったよ……と遠い目をしかける佐助だったが、手渡された箱の感触ーーそれは間違い無く革のものだーーにサァっと青ざめた。

「……せ、先生……こ、これって……」
「嗚呼」

ニヤリと笑う。その笑みに佐助は手にした箱を思わず落としそうになった。

そして青ざめ固まる佐助に容赦無く続けられる数学教師の言葉。

「ホワイトデー、期待してるぜ」
「!!」

テンプレート通りの台詞と笑い飛ばす余裕は佐助には無い。

「当然三倍返しだよなぁ……?猿飛?」
「……」

お約束な念押しまでされて、佐助はもう泣きたくなった。

「安心しろ」

うなだれた赤い頭に、ポン、と大きな手が乗せられる。

「貧乏な学生に無理させるつもりはねェよ」
「先生……」

ああ、どんなに腐ってても先生は先生なんだ……と佐助が感動しかけた瞬間。

「礼は金やモノだけじゃねぇからなぁ」
「……」

教師として以前に人として如何なものか……という台詞を吐いた数学教師からどうやれば逃げ切れるのかと佐助は痛切に思った。
 
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筋肉痛が翌日に出てきてションモリする今日この頃。瞬発力も持久力もありませんが低空飛行でゆるーく過ごしてます。
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